東京高等裁判所 平成8年(ネ)4979号 判決 1997年2月19日
主文
1 原判決を取り消す。
2 本件を横浜地方裁判所相模原支部に差し戻す。
理由
【事実及び理由】
一 控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「控訴人の控訴を棄却する。」との判決を求めた。
二 被控訴人の本訴請求は、原判決添付の物件目録記載の各土地(以下「本件土地」という。)は、被控訴人の所有するものであるところ、本件土地について、平成七年一〇月一七日に原審相被告株式会社丁原のために同月一一日売買を原因とする所有権移転登記、同年一二月二八日に原審相被告戊田エンタープライズ株式会社のために同日売買を原因とする所有権移転登記、右同日に原審相被告甲田厚生信用組合のために同日設定契約を原因とする根抵当権設定登記、平成八年三月一三日に控訴人のために同月九日売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記がなされているとして、所有権に基づき、原審相被告株式会社丁原及び同戊田エンタープライズ株式会社に対しては右各所有権移転登記の抹消登記手続を、原審相被告甲田厚生信用組合に対しては右根抵当権設定登記の抹消登記手続を求めるのに併せて、控訴人に対して、右所有権移転請求権仮登記の抹消登記手続を求めるものである。そして、右三名の原審相被告らは、原審第一回口頭弁論期日に出頭し又は答弁書を提出して、被控訴人は平成七年一〇月に本件土地を原審相被告株式会社丁原に売り渡し、既に所有権を喪失していると主張し、書証を提出するなどして、被控訴人の請求を争ったが、控訴人は、第一回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しなかったところ、原審は、控訴人が被控訴人の主張事実を自白したものと看做して、口頭弁論を分離して終結し、判決言渡期日について控訴人に通知等をしないまま、被控訴人の請求を認容した。
これに対して、控訴人は、当審第一回口頭弁論期日において、右原審相被告らと同様の主張をし、被控訴人の請求を争っているものであり、当事者双方とも、訴訟経済、判断の合一のため、本件を原審に差し戻し、前記原審相被告らの事件と併合、審理されることを望んでいる。
右事情に本件を当審で審理することにすると証人等に二重の負担を強いることになることを併せ考慮すると、原判決を取り消して、本件を原審に差し戻すことができるものと解すべきである。
三 よって、原判決を取り消した上、民事訴訟法三八九条一項の規定を適用して、本件を原審に差し戻すこととし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 町田 顕 裁判官 村上敬一 裁判官 末永 進)